絵紙ワンダーランド WEB MUSEUM

「絵紙ワンダーランド―小千谷の雛まつり」展を紹介するページです。
展覧会の様子と展示されている絵紙(えがみ)や押絵(おしえ)の見所を紹介していきます。
随時、写真や解説を追加していきますので、お楽しみに!

 

■第1室「小千谷の雛まつりと絵紙(えがみ)」

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絵紙(えがみ)とは、小千谷の言葉で、浮世絵、特に多色刷りの木版画である錦絵のことです。
小千谷では、浮世絵を数枚ずつ連ねて壁かけにしてお雛様に飾る風習があります。
この展示室では、小千谷の家で飾られているように絵紙と雛人形を展示しています。
雛人形だけでなく、手毬や押絵など様々なものを好きなように飾り、とにかく華やかに賑やかに飾り立てるのが小千谷流のお雛様です。

 

【大ママさんのお雛様】

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家族に「大ママちゃん」と呼ばれている高野家のマチ子さん。
結婚前、仲人さんから「小千谷ではお雛様巡りがあるから、嫁入り道具にお雛様を持ってきたらどうだ」と言われ、持参したのがこの段飾りです。絵紙はもう飾らなくなった家から「毎年飾ってくれる人に」と譲り受けました。

 

【山田屋さんのお雛様】

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小千谷の老舗京呉服店、山田屋さん。
絵紙が赤くにじんでいるのは、中越地震で被災した際に水で濡れてしまったため。処分も考えたそうですが、これも家の歴史だとそのまま飾り続けています。だんごの木にぶら下げた昔の商標やつるし雛は、ご商売をしている山田屋さんならではの華やかな飾りです。

 

■第2室 「絵紙の多彩な楽しみ方」

小千谷で最も一般的な絵紙は、第1室で壁にかけている絵紙のようにつなぎ合わせて壁かけ状にしたものです。それ以外にも、画帖や巻物、屏風に仕立てたり、絵紙の場面を押絵(おしえ)で再現することもありました。時代や好みに合わせて様々に工夫された絵紙からは、受け継いできた家の歴史を垣間見ることができます。

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壁掛け状の絵紙いろいろ。
掛け軸状に丁寧に表装したものもあれば、絵紙をつなげただけのものもあります。
右側は、絵紙の一場面を押絵で再現したものです。

 

【小千谷の押絵(おしえ)

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押絵とは、厚紙に綿をのせて美しい布で包み、花鳥や人物、物語などを表した細工で、主に羽子板・壁掛けなどに用い、江戸時代から盛んにつくられました。

小千谷の雛祭りには、押絵を飾る家も多くあります。作られたものを買ったというものもあれば、その家で作られたものもあり、家々の個性が現れています。
題材は歌舞伎などからとったものが多く、写真のひな壇に展示している小さな押絵は忠臣蔵の物語を再現しています。

 

■第3室 「絵紙のまちの浮世絵コレクション」

最後の展示室です。
絵紙のまち小千谷には、愛好家たちから寄贈された浮世絵コレクションがあります。
この展示室では、その中から、小千谷絵紙保存会の初代会長でもある北村雄哉氏が収集した作品の一部を展示しています。また、個人蔵の屏風と画帖も併せてご覧いただけます。

 

【展示している浮世絵】

歌川 豊国(うたがわ・とよくに)(三代)
「国尽倭名誉」

月岡 芳年(つきおか・よしとし)」
「風俗三十二相」
「竪二枚継錦絵」

 

【北村氏の浮世絵コレクション】

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北村氏の浮世絵コレクションより、月岡芳年の「竪二枚継錦絵(たてにまいつぎにしきえ)」。小千谷市教育委員会所蔵。
壮年の芳年の代表作の一つで、大判二枚を縦につないだ縦長の珍しい作品です。展示品は、彫・摺についてもきわめて高度な技術が駆使されており、鮮やかな色彩も非常によく保存されています。

 

【巻物】

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美人絵の浮世絵を集めて巻物に仕立てたもの。小千谷市教育委員会所蔵。

 

■おわりに

25年にわたり絵紙を調査している中央大学の鈴木俊幸教授は、小千谷を「日常に浮世絵がある町」と表現しています。浮世絵が美術品として遠い存在となった現代でも、小千谷では絵紙を「普通」の「大したことがない」ものという人が多くいます。これは、今でもそれだけ絵紙が日常にあり、近い存在であるということの表れともいえます。

雛祭りに絵紙を飾る風習は、昭和30年代に入ると徐々に廃れていきます。残念ながら捨てられた絵紙もあったようですが、中には昔ながらの雛飾りを続けている家が多くありました。また、絵紙をきっかけにたくさんの浮世絵を収集していた人もいました。今回、ご覧いただいたのは、そうして受け継がれてきた絵紙たちです。大切な品をお貸しいただいた皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

絵紙とは、小千谷の方言で浮世絵のことをいいます。でも、「絵紙≒浮世絵」つまり、同じものだけどちょっと違うのです。美術品として浮世絵を楽しむもよし、伝わる家の思い出と歴史が込められた絵紙として楽しむもよし。この風習を多くの方から親しみ、楽しんでいただけたら幸いです。

この度は「絵紙ワンダーランド ―小千谷の雛まつり―」にご来場いただき、誠にありがとうございました。

小千谷絵紙保存会

2020年4月20日