薄井 崇友 USUI Takatomo
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あなたたちだけじゃない 私たちも宿んでいます/ナバホの犬
ターポリンにインクジェットプリント
200×150cm 2018
 
撮影のときガイガーカウンターで放射線量を計る。放射線は「見えない・臭わない・音もない」。その数値を写真に重ねる。数字という抽象的な記号で放射線の可視化を試みている。
福島の原発事故で、気温や湿度と同じように放射線量を気にしなくてはいけなくなった。過ぎゆく月日はそれを慣らすが、影響ははじまったばかりだろう。セシウム137の半減期は30年。100年経ってもやっと1割。元にはもどらないのだ。あの事故で、放射能は私達の日常に入り込んでしまった。
世界には「風下の地・ニュークリア―レイシズム」の地が多数ある。原爆投下・核実験・原発はみんな「風下住民」をつくる。その地に行き日常を撮る。その地の住民は人間だけじゃない。ペット、家畜、野生の動植物だっている。彼らにだって生存権はあるし、それを守るのが人間の仕事じゃないのか。
原発事故で福島もまた風下の地〈Downwinders〉になってしまった。放射能は、見えないし臭いも音もないが、よ~く、耳を澄まし目を凝らし深く息をすると、変わってしまったことを感じるはずだ。しかし、人間は自身に言い聞かせ続けると、いつしか何も感じないようにセンサーを遮断することができる。人災の原発事故を地球の営みの大災害にしてしまうのだ。「否認の病」だ。そうして悪夢は繰り返すのか。
繰り返さないために、ただただ目の前の事実をちゃんと見て、生き方を、地球と人間のかかわり方を、自然な姿に戻せばいいだけなのだが……。  

 

略歴

美術家、ルポルタージュ・フォト、愛犬家
1960 福島県白河市生まれ
1986 創形美術学校終了
1991 G.Gibson Gallery(シアトル)と契約 
1988年から感光乳剤(印画液)を使った作品を制作。日本とアメリカで発表
2011年の福島原発事故から画像に線量値などをコンバインした作品をつくりはじめる。国内外で原発やニュークリア・レイシズムの地の日常を撮影取材し制作している。
現在、バセンジー犬の梅と一番(金太郎と梅の仔)を飼う。彼らを地球上に棲む人間以外の動物たちのシンボルとして観察している。
趣味にアロエ栽培。金曜官邸前反原発デモにできるかぎり参加・撮影記録中。

 

福島第一原発事故以後の取材など

2011 原発輸出に調印直後のベトナム
2013 グバーグ原発と喜望峰(南アフリカ共和国、ケープタウン)
2014 再稼動を準備する川内原発・玄海原発
2015 北米大陸延べ11万キロのドライブで2カ所の原発とネバダ核実験場からの低線量被爆地
2015 知床半島から望む北方領土
2016.6 稼動を問う国民投票を控える世界最古の稼動原発ベツナウ。
2016.7 再稼動直前の伊方原発
2017.3 玄海原発の再稼動を審議する佐賀県
現在、雑誌「週刊金曜日」に定期的に寄稿、インターネットテレビ「デモクラTV本会議」にコメンテーターとして定期的に出演 

 

主な展示

1996 ベーリングハム・ビエンナーレ(USA,Whatcom County Bellingham Museum)
1997 New Jersey International Juried Show'97(USA,NEW JERSY CENTER FOR VISUAL ARTS)準大賞授賞
1998 福島の新世代'98-A Message to the Next Century-(福島、福島県立美術館)
G.GIBSON Gallery(USA・シアトル/92,94,99)などで個展10回 
八色の森の美術展―未来に繋ぐ絵画考―2017(新潟、南魚沼市)、8+9平和展及び被爆70周年を考える現代美術展(長崎、長崎市)などに参加。他多数